2023年2月24日(金)、新年度より発足予定の「歴史の旅企画班」活動の予行として奈良市へ行きました。興福寺では東金堂と国宝館を見学し、著名な阿修羅像を初めとする脱活乾漆の八部衆立像や十大弟子立像、旧山田寺の銅造仏頭、康弁作の天燈鬼・竜燈鬼像といった日本屈指の名作を拝観しました。久しぶりの興福寺でしたが、国宝館の密度の凄まじさにはいつも圧倒されます。東金堂のずんぐりとした四天王像とも久しぶりの対面、踏まれている邪鬼が結構ユーモラスな表情をしてて好みなのです。
五重塔が今年から修理に入るので、猿沢池との光景を目に焼き付けつつ高畑町へ。雨の中、白樺派を代表する小説家である志賀直哉旧居を訪問しました。志賀直哉自ら設計に携わったという空間は彼のこだわりが存分に反映されており、そのひとつひとつに注目しながら散策しました。その雰囲気の良さに「こういう家に住んでみたい」という声も続出。武者小路実篤や小林秀雄、堂本印象や亀井勝一郎など多くの文化人が訪れていたことから高畑サロンとも呼ばれているそうです。奈良には他にも東大寺観音院や日吉館といった学者や文化人が集う文化サロンが多くあったそうですが、今はないものも多く、そのような点でも貴重な場所だと感じました。
志賀直哉旧居を後にして、新薬師寺へ行きました。高畑は至る所に土塀などが残っていて非常に雰囲気の良い町だと感じます。新薬師寺の本堂には国宝の十二神将像と薬師如来坐像が安置されています。もちろん十二神将像も良いのですが、個人的には薬師如来坐像の方が好みです。大きく見開いた目、ぶっとく頼もしい手、ぶ厚い身体と鋭く刻まれた衣文などから感じる、とてつもないボリュームや内から外へ外へと気力を発散するかのような表現が非常に好みです。この像も今年6月から修理に入るそうなのでしばらくのお別れ。しっかり目に焼き付けることが出来ました。
その他、奈良ホテルを見学したり、ならまちを歩くなど、非常に充実した巡見となりました。観光客が戻りつつあり、人混みも増えてきましたが、高畑はその中でも比較的静かで落ち着いた雰囲気でした。もっと知られて欲しいと思う反面、人混みが増えるのも嫌なので今のままであって欲しいなとも思ってみたり……(2回生・山田伊吹)