髙田 実 教授 Minoru TAKADA
専門分野:イギリス近現代史、福祉の歴史、友愛組合
キーワード:生の歴史学、相互扶助、個と共同性の関係史
学生へのメッセージ
大学は<問題発見の場>です。わたしを知るには鏡が必要です。そうです、他者との対話なしには自分が何者であるかは、わからないのです。しかし、その対話の相手がしっかりしていないと、自分を考えるための真の思考力は身につきません。カップラーメンやファーストフードばかり食べていると、その味にならされてしまい、本当のおいしさはわかりませんね。それと同じで、学生時代に<ほんもの>を相手にしないと、真の思考力は身につきません。大学の4年間、これまでに蓄積されてきた<ほんもの>の歴史学の成果と格闘し、仲間と議論するなかで、一生考えていくべき「自分の問題」を発見しましょう。
ゼミ紹介
私のゼミでは、近現代ヨーロッパとはどんな時代であったかを考えます。歴史を学ぶ意味は、<時空上の他者との対話を通じて自己の生き方を考える>ところにあります。近現代ヨーロッパと対話するなかで、私たちのいまとこれからを考えましょう。
ゼミ活動は、以下の3本立てです。
(1)専門書を読む力をつける【前期】
4年生で卒論を書くためには専門書を読む力が必要ですが、専門書は小説のようには読めません。それなりの訓練が必要です。前期は、歴史学の名著や古典を取り上げて、専門書の読み方・まとめ方、研究発表の方法、論文の書き方を実践的に学びます。これまでには、リン・ハント『フランス革命の政治文化』『人権を創造する』、べネディクト・アンダーソン『想像の共同体』、ジャン・ジャック・ルソー『社会契約論』、マックス・ウェーバー『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』などを読んできましたが、2024年度は、吉岡昭彦『インドとイギリス』(岩波新書、1975年)を読みます。半世紀前に書かれた新書ですが、体系だった書物であり、今日でも依然として輝きを失っていません。この秀逸な本をゼミ生と一緒に読み、納得いくまで議論しましょう。ぜひ「演習」の醍醐味を味わってください。
(2)個別報告をする【後期】
後期は各自、卒論につながるテーマを見つけて、自由に報告してもらいます。テーマは、西洋史に限定されません。テキストの読解、個別報告、いずれについても、集団的に討論する力をつけます。知は集団的なものです。他者との対話なき知は、独りよがりになり、危険です。
(3)ゼミ行事予定【自由参加】
ゼミは共同体です。コンパ(4月)、ゼミ合宿(8月か9月)、九州西洋史学会若手部会参加(11月)、紅葉狩り(11月)、忘年会/新年会(12月か、1月)、他ゼミとの合同ゼミなどを予定しております。いずれも参加自由ですが、できるだけ多くの方の参加を期待します。
主な担当科目
西洋史概説、西洋史研究、西洋史史料研究
研究の紹介
研究を始めた頃は、ヨーロッパの福祉国家はどのようにして形成されたのか、知りたいという思っていましたが、イギリス留学を機に「福祉の複合体」へと関心を移しました。一貫した関心は、近代社会で形成されてきた「相互扶助」というヨコの共同性が、ヨーロッパの福祉社会のなかでどのような位置を占めていたのかという点にあります。近年では、より視点を広げて、人びとの生を支えた多様な共同性の視点から、「生の歴史学」を描いてみたいという思いが強くなっています。